【研究成果報告】 「チンパンジーが協力して課題解決:2人で数字を順番に答える 」(松沢哲郎コーディネーター)

京都大学高等研究院の松沢哲郎(まつざわ・てつろう)副院長・特別教授、米国・インディアナポリス動物園クリス・マーチン(Christopher Flynn Martin)研究員、オックスフォード大学のドラ・ビロ(Dora Biro)准教授らの研究グループは、2人で連続的に協力しなければ解決できない課題を考案し、チンパンジー2人が解決できるか観察することで、チンパンジーが役割交代をしながら連続的な協力行動をとることを、世界で初めて実証しました。

人間以外の霊長類を対象としたこれまでの研究では、2個体が協力して課題を解決できることが、さまざまな場面で実証されてきましたが、ほとんどの例は1回きりの動作でした(たとえば、2個体が同時にひもをひっぱって遠くの台を引き寄せて食物を手に入れるなど)。それに対して、1回だけでなく何回も連続して、互いに役割交代しながら、息をあわせて解決する能力についてはこれまでほとんど研究がありませんでした。

今回の研究では、すでに数字を小さい方から順に選ぶことを習得しているチンパンジーが参加します。2人のチンパンジーに1つのコンピューターを与え、その画面全体に、一連の数字(例えば1~8)をランダムに散りばめて表示します。課題は、この数字を小さい数字から順番に最大の数字までタッチしていくものです。ただし、画面前に座る2人のチンパンジーの間には透明な障壁があり、右のチンパンジーは画面右半分に表示される数字のみ、左のチンパンジーは画面左半分に表示される数字のみに触れることができます。

たとえば画面左半分に「1, 5, 7 ,8」、右半分に「2, 3, 4, 6」の数字を表示します。まず左のチンパンジーが「1」をタッチすると、続けて右のチンパンジーが「2, 3, 4」をタッチ、するとすぐ左のチンパンジーが「5」をタッチする、といったふうに、交互に役割交代をしながら、協力して一連の数字を順番に選択していくことができました。

今回はチンパンジーの2個体を1組として、3組でこれを検証。いずれも母とその子どもというペアです。興味深いことに、母を真似するように子どもが対応する流れが顕著で、社会性の「母から子へ」という学習体系が見られたことです。

本論文はヒト以外の動物の協力行動・協応行動を研究する新しいパラダイムを作ったといえ、役割交代の進化を考えるうえで貴重な知見をもたらしました。コミュニケーションや言語といった、広くいえば社会的なインタラクションの背後には、必ず役割交代や話者交代があります。そうした役割交代の進化を考えるうえで、母と子を題材にした貴重な知見だといえます。

*詳細については、下記のサイトをご覧ください。
https://langint.pri.kyoto-u.ac.jp/ai/ja/publication/ChristopherFMartin/Martin2017-srep.html

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