セミナー

今後の予定

【第38回創発セミナー】「生きものの知性を探る旅 : 複雑環境における粘菌の賢い行動」

日時: 2024年5月1日(水)15:30~17:00
場所: 中部大学リサーチセンター大会議室、Zoom配信
講師: 中垣 俊之(北海道大学電子科学研究所 教授、中部大学創発学術院 客員教授、専門:原生生物行動学、物理エソロジー)
 

概要:
「生きものが知的であるとは一体どういうことだろうか?」という疑問について、粘菌という単細胞生物の振る舞いを見ながら、なるべく根源的なところを見てみようとした研究を紹介します。「知的」といってるのに、「単細胞生物」を対象としていることが、すでに問題提起的です。「単細胞」という言葉にはあまり賢くないという意味がありますが、どうもそうとは言い切れないようです。
 知的というと、まずはヒトの能力を思うのがふつうです。難しい試験問題が解けたり、味わい深い小説が書けたり、巷の知能テストで高いスコアをとったりする能力を思い浮かべるのではないでしょうか。そのような能力が積み重なった先に、宇宙探査 やスマートフォンなどの技術があり、また国を統べる法体系や国際連合のような国際政治があります。まさにヒトの知性の象徴でしょう。
 一方で、そのような高度な技術をささえる工業製品の製造の現場では、日々立ちはだかる問題を克服したり回避したりしていますし、また法律の立案や政治交渉の現場でも、関係者間の利益相反やジレンマを調整するべくよりよい解決案を模索していることでしょう。そこで発揮されるヒトの能力とは、「遭遇する状況がどんなにややこしくて困難であっても、未来に向かって生き抜いていけそうな行動がとれる」と言ってよいでしょう。
 ひとまず、こんなふうに知性を捉えてみると、ヒト以外の生物がそれぞれの置かれた状況、つまり野外の生息環境で、どのような行動をとるかを調べることで、その知的レベルを推し量れることになります。実際、野外環境は多くの要因が空間的にも時間的にも変動する非常にややこしい状況といえます。生物は、そのような状況で生き抜くための行動をとらなくてはいけません。
 この考えをあらゆる生物に適用していくと、いちばんシンプルなものとして単細胞生物の行動に行き着きます。驚くべきことに、一〇〇年ほど前の時代を代表する生物学者たちは、すでに単細胞生物の行動に特段の関心を持っていました。水中を泳ぐゾウリムシや水底を這い回るアメーバだって、同じ刺激に対していつも同じ反応を返すだけの単純な機械では決してないことを発見していました。単細胞生物の意味ありげな行動は、すでに見つかっていたのです。
 この話では、この一〇〇年前の研究に再び焦点をあてます。しばらく忘れ去られてきたこの古典的な研究を引き継いで、現在の科学的概念や手法によって私たちなりに再検討してきたことをご紹介いたします。
 
参考文献:中垣俊之、「考える粘菌 -生物の知の根源を探る-」ヤマケイ文庫(山と渓谷社)2024年1月

 
★要事前登録

以下のフォームよりご登録ください
https://forms.gle/7VYDZAjf2Eb5pGi96

 

<zoom参加ご希望の皆様へ>
前日までに、ご登録いただいたメールアドレスへzoom接続情報をお送りいたします。
その他ご不明な点がございましたら、下記までお問い合わせいただきますようお願い申し上げます。

 

<連絡先>
中部大学創発学術院
cuaes@office.chubu.ac.jp
0568-51-9844(内線8827)

これまでの開催実績

【第37回創発セミナー】「再生生物学から再生医療へ」

日時: 2024年2月26日(月)15:30~17:00
場所: 中部大学、Zoom配信
講師: 阿形 清和(基礎生物学研究所 所長、専門:再生生物学)

概要:
生物の個体を「細胞の社会」と考えた時、「細胞の社会」の一部が失われた時に細胞を使って「細胞の社会」元通りにすることを『再生』と呼びます。そのような観点で『再生』を考えると、切断などで体の一部が失われた時、残っている細胞は①体のどの部分を失ったかをどのように感知するのか、そして、②どのようにして複雑な構造と機能を再生できるのか、再生能力の高いプラナリアやイモリを使った謎解きを紹介したいと思います。

【第36回創発セミナー】「WEターンからAI/親友論へ」

日時: 2024年1月24日(水)15:30~17:00
場所: Zoom配信
講師: 出口 康夫(京都大学大学院文学研究科 教授、専門:哲学)

概要:
生成AIの爆発的普及に伴い、「AIとは何か」「人間とは何か」「人間はAIといかなる関係を築くべきか」が改めて問われている。本発表は、まず、全ての人間が抱える「根源的なできなさ」である「一人では何もできない」という「単独行為不可能性」に着目し、そこから行為者・自己・責任・権利・ウェルビーイング・自由の「主体/単位」の「私(I)」から「われわれ(WE)」へのシフト、即ち「WEターン」を導き出す。一方「人工知能(AI)」と言っても、その内実は様々である。本発表では、AI開発の現状を踏まえつつもその未来をも視野に入れることで、行為や自由等の主体とされた「WE」のメンバー同士としての人間とAIのあるべき関係について考えてみたい。

【第35回創発セミナー】「絵から飛び出した不可能立体の世界」

日時:2023年9月7日(木)15:30~17:00
講師:杉原 厚吉(明治大学先端数理科学インスティテュート研究特別教授、 専門:数理工学)

講師プロフィール:
1973年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、電子技術総合研究所、名古屋大学、東京大学などを経て、2009年より明治大学へ着任し、2019年4月より現職。専門は数理工学。ロボットの目を開発する研究の中で、不可能図形のだまし絵を立体化する手法を見つけ、立体錯視の分野へも研究を広げてきた。さまざまな不可能立体を創作し、立体錯視アーティストとしても活躍している。国際ベスト錯覚コンテスト優勝4回、準優勝2回。錯視立体作品は、2018年9月より2020年5月までの1年8ヶ月にわたって台湾の国立故宮博物院で特別展示されるなど、多くの科学館・美術館で展示の実績を持つ。

概要:
「不可能立体」という言葉は、だまし絵を見たとき頭の中に浮かぶ架空の3次元構造という意味で使われ始めました。オランダの版画家エッシャーが作品の素材に使ったことでも有名です。その後、だまし絵と同じに見える立体を作るトリックもいくつか見つかりましたが、特別な視点から見たときだけ成立するトリックなので、絵の延長に過ぎませんでした。しかし、最近になって、視点をある範囲で動かしても「あり得ない」という感覚が起こり続ける立体錯視を見つけました。それを、数学的背景とともに紹介します。実在する立体を使ってあり得ない立体を表現することができますから、不可能立体が真に絵から立体へ飛び出したと言っていいでしょう。

 

【第34回創発セミナー】「フェルマー予想を巡って」

日時:2023年7月6日(木)15:45~17:15
講師:森脇 淳(中部大学人間力創成教育院院長補佐・教授、創発学術院兼務、 専門:数学、代数幾何学、アラケロフ幾何)

 

【第33回創発セミナー】「南米の小さなサルを使った研究の展開」

日時:2023年5月26日(金)15:30~17:00
講師:中村 克樹 (京都大学 ヒト行動進化研究センター長・教授、専門:認知神経科学)

 

【第32回創発セミナー】「大学教育のあり方について」

日時:2023年3月15日(水)15:30~17:00
講師:山口 佳三 (京都大学監事、北海道大学元総長・名誉教授、中部大学学園顧問、専門:微分幾何学)

 

【第31回創発セミナー】「新型コロナウイルス感染症対策の数理的デザイン」

日時: 2023年1月25日(水)15:30~17:00
講師:講師:西浦 博 (京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻教授、専門:理論疫学、感染症疫学)

 

【第30回創発セミナー】「人類学と霊長類学の学際的共同研究が目指すこと」

日時: 2022年11月30日(水)15:30~17:00
講師:河合 香吏 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授、専門:人類学)

 

【第29回創発セミナー】「脳を覗く: にぎやかな細胞たち」

日時: 2022年9月27日(火)15:30~17:00
講師:鍋倉 淳一 (自然科学研究機構生理学研究所長、専門:神経生理学)

 

【第28回創発セミナー】「放射線が拓く植物の新しい世界」

日時: 2022年6月16日(木)15:30~17:00
講師: 中西 友子 (東京⼤学⼤学院農学⽣命科学研究科 特任教授、学校法人中部大学 理事・学事顧問)
(専門:放射化学、植物生理学)

 

【第27回創発セミナー】「不確定性原理について」

日時: 2022年4月21日(木)15:30~17:00
講師: 小澤 正直 (中部大学AI数理データサイエンスセンター、創発学術院 特任教授、専門:数理科学)

 

2021年度
2016年度~2020年度

PAGE TOP